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宮城県図書館だより「ことばのうみ」第26号 2007年12月発行 テキスト版

おもな記事。

  1. 表紙の写真。
  2. 巻頭エッセイ 図書館の「彼女」 作家 佐藤 賢一さん。
  3. 特集 宮城県図書館のルーツを訪ねて その3 ~ 仙台藩 叡智の礎「伊達文庫」 ~。
  4. 図書館 around the みやぎ シリーズ第21回 美里町立南郷図書館。
  5. 読書推進講演会佐伯一麦さん「 私の小さな本棚~心に記した読書ノート」
  6. 図書館からのお知らせ。

表紙の写真。

今回の写真は、本館所蔵資料「仙台領国絵図」元禄14年(1701)です。

巻頭エッセイ 図書館の「彼女」 作家 佐藤 賢一さん。

図書館を好きになったのは、高校生の頃だ。読書家だったわけではない。きっかけは密かに憧れていた女の子が、放課後に図書館に通う習慣だと突き止めたことだった。

真似て、私も図書館に通うようになった。さも勉強目的という顔で閲覧室に進み、文学青年を装うために、ときに文豪の名著まで手にしながら、それとなく女の子の隣に座る。ちらちらと眺めながら、なんの勉強をしているのか、どんな本を読んでいるのか、ということは、こういう性格なのではないかと、様々に想像を膨らませる。大学の頃も、大学院の頃も、他にガールフレンドがいるときさえ、私には常に図書館の「彼女」がいたのだ。

もちろん、ストーカーとは違う。不愉快な思いをさせるどころか、声ひとつかけない。いや、実はかけてみたこともあるが、見事にふられた。それでも作家にはなれたのだから、かわりに本の女神のほうには、いくらか気にかけてもらえたようだ。

著者のご紹介。

さとう・けんいち 作家。山形県鶴岡市出身。山形県立鶴岡南高等学校、山形大学教育学部卒、東北大学大学院文学研究科単位取得退学。西洋史学専攻。在学中の1993年、『ジャガーになった男』で第6回小説すばる新人賞を受賞。1999年、『王妃の離婚』で第121回直木賞を受賞。

特集 宮城県図書館のルーツを訪ねて その3 ~ 仙台藩 叡智の礎「伊達文庫」 ~。

昭和20年(1945)の空襲によって、すでに疎開していた図書約9000冊を除き、宮城県図書館の蔵書はほぼ失われました。戦後、資料収集を精力的に再開する中で、昭和24年(1949)に仙台藩主・伊達家ゆかりの蔵書、「伊達文庫」が収蔵され、図書館再建にとって大きな力となりました。現在、「伊達文庫」は本館特別コレクションの中核を占めており、県指定有形文化財である『禽譜』『生計纂要』など多数の貴重な資料が含まれています。本号では特集「宮城県図書館のルーツを訪ねて」の第3回として伊達文庫をご紹介します。

伊達文庫の成り立ち。

「伊達文庫」とは仙台藩の歴代藩主が収集した蔵書と『伊達治家記録』『伊達世臣家譜』などの藩政資料によって構成され、昭和24年の収蔵に際して伊達文庫の名称が付されました。「文庫」とは、元来は「ふみくら」、書物のくらの意味で使われました。図書館では、一括して収蔵したひとまとまりのコレクション(蔵書群)を、一般の蔵書と区別して、蒐集した人や寄贈者の名称を冠して「○○文庫」という名称を付けることがあります。
本館は、昭和24年、伊達家の旧蔵書を購入により、特別文庫(特別コレクション・注意:1)の一つとして収蔵しました。資料総数は4170点(29681冊)にものぼり、和古書3253点(19197冊)、漢籍666点(9980冊)、洋書251点(504冊)から構成されています。
これら伊達文庫の資料は、『仙台領国絵図』『仙台城下絵図』等の古絵地図、『関算四伝書』(戸板保佑編)『禽譜』(堀田正敦編)『生計纂要』(大槻玄沢訳)等の博物学関係の研究書、『尉繚子直解』『音点春秋左伝詳節句解』等の朝鮮古刊本など、22件が、宮城県指定有形文化財となっています。また、伊達文庫はコレクションとしての網羅性、体系性についても極めて優れていると、高く評価されています。

門外不出であった歴代藩主の蔵書。

仙台藩祖伊達政宗は、智略に長けた武将であったと同時に、和歌などに造詣の深い教養人でした。政宗が日常的に読書を楽しみ、詩歌に親しむ様子は「第一御気マメニ御座シ・・・其間ニハ書籍ヲ見玉ヒ、又詩歌文字ノ御吟味アリ」(『貞山公治家記録附録』)などと記されています。
また、第5代藩主伊達吉村は歌人としても名高く、歌書の収集を積極的に行っていました。京都歌壇の名だたる歌人たちと交流し、作歌の指導を仰いでいます。吉村の蔵書印があるもの141点の内、108点が歌書であり、吉村の和歌に対する真摯な姿勢を垣間見ることができます。
政宗を始めとする歴代の仙台藩主の下で集められた書物は、仙台城内においては、二の丸の「御物置」と呼ばれる書庫に収められていました。書物はよほどの必要がない限りは門外不出とされており、家臣が御物置の書物を利用する際には、「他言しない、写し取らない」との誓詞を出さなければならないほどでした。
こうして仙台藩の隆盛とともに集積した書物は、明治維新以前の仙台における「五大文庫(注意:2)」の一つとされ、和算や典礼書、歌書など、文武両道を重んじた伊達家の家風を反映する文庫となっています。

(注意:1)宮城県図書館の特別文庫(特別コレクション)は、「伊達文庫」の他には、「青柳文庫」「養賢堂文庫」「小西文庫」「今泉文庫」「大槻文庫」等があります。
(注意:2)「五大文庫」とは、「青柳文庫」(仙台藩公開文庫、青柳文蔵の旧蔵書)、「養賢堂文庫」(藩校養賢堂の書庫)、「法宝蔵」(龍宝寺の書庫)、「名山蔵」(塩竃神社祠官藤塚知明の書庫)、「伊達文庫」(仙台藩主伊達家の書庫)の5つといわれています。

明治維新後の伊達家蔵書と仙台文庫会。

明治元年(1868)9月、第13 代藩主 伊達慶邦は仙台城を退き、10月官軍入城するその間藩主の道具、書物類は仙台一本杉の伊達家別邸( 現在の仙台市若林区一本杉)に運ばれました。また江戸藩邸の道具類も一本杉邸に運ばれましたが、混乱の最中に失われたものは少なくないといわれます。 やがて旧仙台藩士作並清亮(1841-1915 年、藩校養賢堂に学んだ儒者、伊達家の家扶)は、それら道具書籍類を整理し目録を作成しました。
明治26 年(1893)、清亮は旧仙台藩士の有志と共に「仙台文庫会」を結成、仙台藩関係資料の収集を進めると共に、明治29 年(1896)に仙台市東三番丁に書籍閲覧所を設けました。同年、伊達家は蔵書のなかから冊子体の和漢書を選んで仙台文庫会に寄託し、伊達家蔵書が初めて公開されたのです。仙台文庫会は明治37 年(1904)に解散し、寄託資料は再び伊達家に返却され、本館に収蔵される時を静かに待つことになりました。

伊達文庫の蔵書印。

伊達文庫の資料には数種類の蔵書印が押印されており、収蔵時期や所蔵者を探る手掛かりとなります。伊達文庫蔵書の多くには、「伊達伯観瀾閣図書印」という正方形の朱印があります。「伊達伯」とは伊達家の総本家の意、また「観瀾閣」とは伊達家の堂号のことで、伊達家から仙台文庫会への寄託した際の伊達家の所蔵を示すための押印だったようです。他には、第5代藩主吉村の蔵書印「璧」、漢籍の一部にみられる「伊達氏伯家蔵宝書」、仙台文庫会に寄託した際に、仙台文庫会が押印した「仙台文庫」があります。

〈参考文献〉
『伊達文庫目録』宮城県図書館 1987年
『宮城県図書館の貴重書』宮城県図書館 1994年
『本食い蟲五拾年』常盤雄五郎著 今野印刷 1991年(復刻版)

伊達文庫の蔵書。

『名山図譜』谷文晁画 川村元善編 文化元年序 刊本

江戸期、南画の大家といわれた谷文晁が描いた、全国の山岳画集。編者の川村元善は奥州南部出身の医師でした。後には『日本名山図会』と改題されています。

『光琳百図』2巻後編2巻 尾形光琳画 酒井抱一編 刊本

人物や草花、山水など200余図が描かれ、光琳芸術を後世に伝える唯一の作品といわれています。江戸琳派の継承者、酒井抱一が、尾形光琳の百回忌記念に製作したものです。

『集千家註批点杜工部詩集』20巻文集2巻附録1巻付杜工部年譜1巻 (唐)杜甫撰 (宋)劉辰翁評点 (元)高楚芳編 日本南北朝拠元至大元年 雲衢会文堂刊本重刊

南北朝時代に刊行されたと思われる、五山版(禅宗寺院で刊行された書物)。宋、元、明代の中国、朝鮮で出版された書物の模倣、復刻が多く、日本の出版文化に与えた影響の大きさをうかがわせます。

『掬月集』伊達重村著

仙台藩第7代藩主伊達重村の自筆歌集。教養が非常に高い藩主で、第5代藩主吉村の時代につくられた学問所が、重村の治世下(安永元年)において「養賢堂」と称されるようになりました。

『刻白爾天文図解』2巻 司馬峻(江漢)著 文化6年序 刊本

コペルニクスの地動説を紹介した書物。司馬江漢は、鈴木春重という名の浮世絵師でしたが、蘭学者、また日本で初めて銅版画を試みた人物としても著名です。

『礼儀類典』510巻正誤1巻図絵3巻 徳川光圀編 宝暦2-4年 写本

朝廷や公家の儀式、典礼全般を網羅した部類記。徳川光圀は水戸藩第2代藩主で、紀伝体の歴史書『大日本史』の執筆を始めた人物です。

ひとくちコラム。

  • 蔵書閲覧に誓詞 ― 親兄弟にも他言しないと塩竃大明神に誓った!?
    伊達家の蔵書が仙台城二の丸の書庫「御物置」に収蔵されていた時代、それらはもとより藩主の蔵書であったので「衆の観ること得ざりしもの」でした。しかし、時には家臣も閲覧することが許されたのですが、閲覧の際には誓詞を提出しなければなりませんでした。誓詞は「御系図御代々記並治家御記録拝見被仰付候者誓詞」というもので、これらの記録の内容について親子、兄弟にも他言しない、写し取ることもしないと、日本国中の神々ならびに塩竃大明神に誓うものだったのです。

図書館 around the みやぎ シリーズ第21回 美里町立南郷図書館 館長 小丸 知子。

美里町南郷図書館は、平成18年9月に小牛田図書館の分館として開館しました。美里町は平成18年1月に旧小牛田町と旧南郷町が合併した、人口26,000人の水田地帯の町です。
南郷町には図書館がなかったため、南郷総合支所となった旧南郷町役場の1階の空スペースを利用し、南郷公民館図書室の蔵書を引き継ぎ、新刊書とCD・DVDを購入して図書館として整備しました。面積260平方メートルの小さな図書館ですが、小牛田図書館とオンラインで結ばれていて両館の蔵書が一度に検索ができ、家庭や携帯電話からもインターネットで予約ができるため利便性が高く、多くの方に喜ばれています。
南郷地区の方には図書館の存在や機能がまだまだ浸透しておらず、まずは「図書館」とはどのようなものか知らせるために、催し物をしたり、他の施設に出向いたりしてPRに努めています。幼稚園・保育所がすぐ近くにあるため子どものお迎え時に立ち寄る人も多く、一番多い利用層が30代であることが特徴です。また夕方には学校帰りの小中学生の姿があって、まさしく若い図書館というところです。12,000冊でスタートした蔵書も20,000冊に増え、南郷地域の地域資料の収集・整理も進み、より図書館らしくなりつつあります。より多くの方に利用していただけるよう、小牛田図書館と協力しながら「地域に根ざしたやさしさあふれる図書館」を目指していきたいと思っています。

美里町立南郷図書館のご紹介。

開館時間:10時~18時。
休館日:毎週月曜日、毎月第1木曜日、祝日、年末年始
交通案内:東北本線小牛田駅から町民バス美里線で「南郷総合支所」下車

図書館のデータ。
蔵書冊数:16,148冊(平成18年度末現在)。
貸出冊数:11,951冊(平成18年度末実績)。

住所:郵便番号989-4205 遠田郡美里町木間塚字中央1番地。
電話番号:0229-58-1212。ファクス番号:0229-58-1215。
ホームページ:http://www.town.misato.miyagi.jp/10shisetu/tosyo/index.html

読書推進講演会 佐伯一麦さん「私の小さな本棚~心に記した読書ノート」。

平成19年11月3日、仙台市在住の作家、佐伯一麦さんをお迎えし、「私の小さな本棚~心に記した読書ノート」と題して講演会を開催しました。佐伯さんが考える読書の楽しみ方や読書歴などのお話を伺いました。

作家を志すまでの読書体験。

子どもの頃は科学者を志していて、読書の中心も科学分野の本でしたが、野間宏、武田泰淳や椎名麟三といった、日本の戦後文学者の作品と出会って、文学に興味をもつようになりました。高校2年生の時には、二十数年ぶりに発表された埴谷雄高『死霊』の第5章に触発されて、小説を書くことを志すようになります。小説を書くにあたって、また読書の対象としても、私小説というスタイルを遠ざけていましたが、中上健治『十九歳の地図』に出会ったことで、人生というものを描く小説を書きたいと思えるようになりました。
週刊誌記者、本屋の店員、電気工を経ながら小説を書き続け、25歳の時、『木を接ぐ』で海燕新人文学賞を受賞しました。

読書の楽しみ方。

読書の楽しみ方はいろいろあって、正しい読み方、間違った読み方というのはないのだと思っています。私の場合は、一度本の内容を把握した後は、自分の中の読書の「地図」を頼りに、部分的に反芻したり思い出したり、つまみ読みをするという読み方が多いようです。
先日モンゴルを訪れましたが、そこで見た天の川の美しさに、川端康成『雪国』の情景描写の的確さを再認識しました。同じことを経験しても、読書の記憶は日常をより豊かにしてくれるものだと感じています。
「作家の講演会など、小説に作家の肉声が加わった、直接的な出会いもまた、文学の一つの要素ではないか」という佐伯さんの言葉通り、参加者にとって、佐伯さんの作品世界に対する関心とともに、読書そのもののいろいろな楽しみ方を教えてもらった講演会となりました。

図書館からのお知らせ。

図書館システムの入れ替えのため臨時休館します。

貸出や返却など、図書館資料の情報を管理するシステム機器の入れ替え作業のため、下記の期間は休館します。利用者の皆様にはご迷惑をおかけします が、ご理解とご協力をお願いいたします。

期間 平成20 年1月25日(金曜日)から2月7日(木曜日)まで。

特別展 視聴覚資料のあゆみ 「県図書館と視聴覚資料」を開催中です。

ナトコ映写機およびCIE 図書館(連合軍総司令部民間情報局図書館)に関する資料の展示のほか、宮城県図書館「音と映像のフロア」の移り変わり、また 県内視聴覚センターとしての役割についてご紹介します。

期間:平成19 年12月8日(土曜日)から平成20年3月2日(日曜日)まで(図書館開館日の午前9時30分から午後5時まで)。

場所:2階展示室。

問い合わせ:利用サービス班(1階) 電話番号:022-377-8446。

企画展「みやぎの児童文学」を開催します。

宮城県の観光地や伝統行事などを題材とした、絵本や児童書を展示します。小さな子ども向けにわかりやすく丁寧に、また挿絵を用いながら描かれるみやぎの姿をご紹介します。

期間:平成20年1月12日(土曜日)から平成20年3月2日(日曜日)まで(図書館開館日の午前9時30分から午後5時まで)。

場所:2階展示室。

問い合わせ:利用サービス班(2階)電話番号:022-377-8447。



この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
特に、句読点は音声読み上げのときの区切りになるため、通常は不要な文末等にも付与しています。

「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第26号 2007年12月発行。